応援してね!日本の農業!国産有機大豆・国産有機小麦・有機米などオーガニックな農産物(有機JAS)や加工品を産地直送でお届けします。

金沢大地とは

ようこそ[金沢大地]へ。ようこそ[あぐり.ハグハグ]へ。


金沢市郊外に広がる河北潟干拓地で有機農業を営む井村辰二郎です。
私が有機農業を志したきっかけ、みずからの農産物で加工品をつくるにあたっての基準や考え方をお伝えしたいと思います。
大豆、米、麦を有機栽培する[金沢農業]から、農産工房[金沢大地]への道、そして[あぐり.ハグハグ]を通じてこれから始めたいことなどをお話しします。
※[金沢農業]は日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会の認定による有機JAS認定生産者です。おもな品目は大麦、小麦、大豆、米。
[金沢大地]は[金沢農業]の農産物の販売や、みずから育てた原材料で製造した加工品の販売部門です。


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有機JAS認定生産者

[金沢農業]、農産工房[金沢大地]

代表  井村辰二郎


・農業は千年産業。有機農業で土や水を守りたい。


農業は多くの可能性を持つ産業です。生命を維持する食の根幹を支えると同時に、田圃の保水機能など環境保全の役割も担っています。地球を守り、人を育む。この二つの大きな使命を同時に果たせる産業です。
いまや「環境」が企業経営の重要課題となり、再生・循環型社会に向けて各業界、企業が歩み始めました。本来なら農業は先導者として道を示す立場の はずです。それなのにみずからの手で自然破壊を進めているのではないでしょうか。化学肥料で土の力を奪い、土壌や水質を汚染する。除草剤や殺虫剤などの農 薬で周辺の生態系を壊す。環境保全どころか、これでは自然破壊です。環境に負荷を与える農業から、保全する産業へ。そのひとつの答えとして有機農業があり ます。
十年後、百年後、千年後へと繋いでいきたい。たとえ社会がどのように変化しても自然と人との関わりが健やかであるよう、いまある農地を大切に使い、安心して食べられる糧を育てたいと思います。
 

・2001年2月、有機JAS認定生産者に。

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[金沢農業]、農産工房[金沢大地] 創業者 井村滉(現会長)

父を手伝って農業を始めたのは1997年。それまでも父は有機肥料である堆肥を使い、土づくりに力を注ぎながら米、大豆、大麦の3本柱による土地利用型農業を確立してきました。その道をさらに進めたい、父がこれまで続けてきた取り組みの先に有機農業がありました。
有機農業(JONA有機認定)は土づくりを大切にし、無農薬と有機肥料が基本です。有機肥料はずっと続けてきたこと。あとは無農薬です。これは規 模の大きな農地だから実現できたと思います。まず除草を機械化できるので除草剤を排除できます。また隣接する慣行栽培の農地とのあいだに農薬等の飛散を防 ぐ約4メートルの緩衝地帯が四方に必要なのですが、これもある程度の規模でなければ有機栽培用の農地が確保できません。
幸いなことに私たちの農地は大区画。隣接する農地とのあいだに充分な緩衝地帯を取ることが出来ます。こうして[金沢農業]は2001年2月、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)の有機認証を得ることができました。

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・安定供給で日本の農業全体の底上げを。

 


それまで有機農業は信念や生き方のスタイル、自然保護運動の一環ととらえられてきました。人里離れた山あいで細々と営むイメージだったのではないでしょうか。でも私はある程度の規模をもって取り組み、安定供給をめざしたいと思います。
有機農産物は一部の人だけのものではありません。そして量が確保できなければ食品メーカーは材料として使えません。たとえば大豆。いくら国産の有 機大豆が高品質でも、あまりに少量では生産ラインにのせられない。だからいつまでも輸入品に頼らざるを得ず、やがて日本の農業は衰退していく。[金沢農 業]は国産有機大豆では日本一、国産有機大豆の10パーセントを生産するまでになりました。とはいっても食用大豆の自給率はわずか3パーセント(農林水産省・ 平成16年度)、まして国産有機は国内生産の0.4パーセント程度(平成17年度)と本当に微々たる量です。だからこそ[金沢農業]では機械化、大規模経 営を進めて生産量を増やし、日本の農業全体の底上げをめざします。

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・堆肥もみずからつくる。安全な原料で安心の有機肥料。


有機農業ではまず土づくりが大切です。植えた苗に肥料を与えるのではなく、土を肥やしてその土が植物を育てるという考え方です。だから土に鋤き込 む肥料である堆肥の質はとても大切。無添加飼料による鶏糞や自社の米糠、おからなど、きちんとトレースできる安心原料だけを使って、みずからつくっていま す。かつて弁当等の残飯をコンポスト化して堆肥にとの依頼がありました。リサイクルへの取り組みとしては評価できますが、安全性の環は断たれてしまいま す。食品添加物を含む原料で安全な堆肥ができるでしょうか。添加物入りの原料でも有機肥料といえるでしょうか。田畑はリサイクルのつけを引き受けるゴミ箱 ではありません。
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・田畑と食卓、双方向トレーサビリティを。


食の安全性への関心が高まるとともに、つくる人の顔が見える食べ物を求め、生産から流通、加工を経て消費者に届くまでの履歴をあきらかにするト レーサビリティの仕組みが普及してきました。生産地はどこか、どんな人がつくった農産物なのか知りたい。食べる立場としては当然のことです。
生産者として私も同じことを考えました。どんな人が食べているのか知りたい。うちの大豆がどこで何になっているのか父に尋ねても、どこかで豆腐か味噌になってるだろうと言われました。
せっかく有機大豆に変えたのだから、まず[金沢大地]の主要作物である大豆の流通経路を見直しました。取引は直接、使う人を確かめて手渡したい。と同時に豆腐や味噌などみずからも加工品の製造を始めました。。
今年の大豆を豆腐にするとどうか、どんな品種がいいのか、農産物を使う立場で確かめる実験工房といえるかもしれません。もちろん大豆生産農家なの だから、原料はたっぷり使います。消泡剤を使わず天然ニガリで固めるなど、手間のかかる方法ですが、これも大豆をおいしく食べてほしいからです。2002 年、[金沢農業]から販売・加工部門を分離して農産工房[金沢大地]を設立しました
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・穀物農家の使命として国産有機で小麦をつくる。


いま日本の食糧自給率はカロリーベースで約40パーセント(2002年)です。主食は米といいながら、パンや麺類、ケーキやクッキーなど多くの小 麦製品を食べています。北陸は大麦の産地であり、[金沢農業]ではこれまでも麦茶用の大麦は作っていましたが、麦茶の大麦は穀物とはいえ嗜好品。たしかに 有機農産物への入口として麦茶は大切ですが、やはり小麦を作ろう。パンが焼ける有機小麦の栽培を始めました。ホームベーカリーを楽しむ方々に、風味があり 安心して使える小麦粉をお届けしたいと思います。
国産で有機小麦をつくるのは意義のあることです。製粉して小麦粉にするだけではなく、醤油の原料にもなります。これまで国産有機の大豆を使って 仕込んでいた全国の醤油蔵に喜んで迎えられました。もちろん[金沢大地]の醤油にも使っています。大豆と小麦、どちらも国産有機で仕込めるようになりまし た。

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・農を育み抱きしめる[あぐり.ハグハグ]。


食卓と田畑や自然をもっと密接に結びたい、そして消費者同士が集い情報を交換する場をつくりたい。私たち生産者も交えて農業の可能性をたくさんの人たちと共有するコミュニティづくりを始めました。それが[あぐり.ハグハグ]。
たとえばパンづくりを楽しむ人たちが自慢のレシピを交換しあうベーカリー・コミュニティ、あるいは手づくり味噌の熟成日記など、一人ひとりの食の楽しみや工夫をより多くの人々と共有し、知恵が循環する場にしていきたい思います。
また日本海をのぞむ河北潟干拓地の田畑に足を運んでほしいから、豆やすいか収穫会などを開催します。豆腐づくり教室やバケツで育てるベランダ小麦畑などの食育プログラムも始めます。
環境保全型農業にはたくさんの可能性があります。ひとつずつ大切に育て、確かな未来へと繋ぐ[あぐり.ハグハグ]、あなたの参加をお待ちしています。 topphoto0601-thumb.jpg

 

 

国産有機穀物(大豆・麦類)の安定供給を目指して    

平成18年3月 「農を変えたい全国集会」に寄せて

井村辰二郎

●河北潟干拓地

河北潟干拓地は、もともと日本海に面する汽水湖で、鴨やサギなど沢山の水鳥が飛来し、海と淡水の生物が共存する豊かな水郷だった。今も、この湿地帯は、絶滅危惧種レッドリストに挙げられるハヤブサの仲間「チュウヒ」の貴重な繁殖地として知られる。また、過去の野鳥生息調査で、シギ・サギ類の数では「ラムサール条約」の基準を満たすことが報告されている。

江戸時代の豪商銭屋五平が始めた干拓事業は、前田家から国へと引き継がれ、高度経済成長の中、昭和38年に暫定農業が開始された。豊かな自然と引き換えに約一千百ヘクタールの畑地が誕生したのだ。多くの農家が、大規模水稲作付けを夢見、この地に増反したが、米の生産調整等、国の政策転換により水田から畑地に計画変更された。様々な作物に挑戦したが、重粘土の畑地は、水はけが悪く、作業性も悪い。多くの先人たちの夢は破れ、河北潟干拓地を去っていった。そんな中、私の父は、耕作放棄地や荒れた畑を開墾して、麦・大豆の二毛作による土地利用型大規模経営を実践してきたのである。

● 金沢農業の経営規模

私は、土地利用型の有機穀物農家で水稲・大豆・大麦・小麦・雑穀等を栽培している。

石川県のほぼ中央に位置する河北潟干拓地(畑地)約100ヘクタールと能登門前の第二農場約8ヘクタール。金沢市を中心に水田約30ヘクタール。その他、少しの家畜を飼っている。祖父・父親の代は河北潟での漁と水稲の半農半漁で生計を立てていたが、国営干拓事業により漁業権を失い、父の代に(30年ほど前)大規模な水稲作付けを夢見て河北潟干拓地へ入った。しかし、その途端に米の生産調整が始まり、地目が畑地としてスタートした。あらゆる作物に挑戦、そして失敗を繰り返し、ようやくたどり着いたのが、大麦・大豆の二毛作。水はけの悪い重粘土の土壌を克服するために父親が積極的に行なってきたのが、堆肥散布による土作り。父親の経営をベースに、畑地全てを有機栽培に転換したのが10年前、耕作放棄地を中心に開墾し規模拡大してきた。畑作は麦→大豆の二毛作なので、1年で約240ヘクタールの耕作面積となる。畑地は無化学肥料・無農薬で、河北潟干拓地以外の水田は除草剤(2成分)を田植え前に一回だけ使う。化学肥料は一粒も使用しない。

    なぜ大規模経営なのか

少量多品目の自然農法、就農時理想と考えたのは多くの先輩たちが実践する営農形態だった。しかし、当時は父親が耕作していた30ヘクタールの畑地と、15ヘクタールの水田で手一杯で、有機栽培の野菜までは手が回らなかった。それでは、身近な作物から有機農業を実践しようと有機大豆に取り組み、実験・研究・販売を進める中で、多くの問題が見えてきた。先進的なヨーロッパの認証制度の事例、交付金大豆の仕組み、実需者である豆腐業界のこと、共同購入会や自然食品店など流通の事。有機大豆の生産・加工・流通を勉強してゆく中で、ある中堅の豆腐屋メーカーから言われたことが有る。「有機大豆なんて日本に存在しないよ。有ってもロットが無い。有機国産大豆なんてある種のブーム。日本の消費者は飽きっぽいからアメリカや中国の有機原料で十分。慣行の国産大豆だって安定供給できてないじゃないか」くやしかったが、その通りでもあった。その時から、強く意識するようになったのが、メーカーの加工ロットを満たす量の確保と安定供給。現実として海外との競争が有ることを認識し、土地利用型大規模有機穀物生産農場のモデル構築への挑戦がミッションとなった。

 

    千年産業を目指して

大学の農学部を卒業後、東京からUターン。きっかけは父の入院だった。が、父は言った。「いきなり農業に就くよりは、社会勉強という意味でいろんな経験をしたほうがいい」地元の企業に入社。担当する数十社のクライアントの中には、今で言うIT関連企業が多かった。この顧客たちがこぞって、PL法(製造者責任法)準拠や、環境ISO取得に動きはじめる。その広報活動を手伝いながら「社会貢献のための製品作りとの前提が有っても、その製品自体が害を生み出している可能性も有る。リサイクルが付いて回る時代が来る」。環境ビジネスと言う言葉が登場したのもこの頃である。「千年後にITと言う言葉があるだろうか」。農業には千年以上続く歴史がある。父の仕事、農業に将来性と魅力を感じ始めた。時は企業ブーム。顧客であった大手電話会社の常務に相談した。「なら、さっさとおやめなさい。今から農業して、仮にお米であれば何回作れますか?」私は答えた。「70歳までやったとして40回ですか」。すると「あと40回しか作れないのですよ。本気で農業したいのであれば、今すぐやるべきじゃないですか」目の前の霧が晴れ、その一年後に退職した。このような体験もあり、農業が千年先の子孫へ継承すべき産業であると考えたとき、私にとって有機農業は、手段や目的ではなく、ミッション(使命)となった。祖先が拓いた豊かな大地と水・環境を次代へ継承することが私たち担い手の使命なのである。

1997年、脱サラして農業を始めてからようやく十年が経とうとしている。思いおこせば。バブル経済がはじけ、日本経済が自信を無くし始めたころであった。IT産業が注目を集める一方環境ビジネスと言う言葉も使われ始めた。ミレニアム。「自然回帰」なるキーワードで21世紀を表現したシンクタンクもあった。近年、3グローバルゼーション、経済至上主義が横行する社会の歪が、貧困・テロなどの悲劇として現れ世界に示された。

今、私たちは破壊・略奪・食いつぶし的な生産活動から、保全・相互理解・持続的な生産活動への切り替えの時節であることを認識し、それを実行すべき時にきている。物の時代は終わり心の時代がやってきたのだ。

●農業が自然破壊や汚染をしている場合ではない。

日本人は元来農耕民族であるためだろうか。「お百姓さん」にたいして風当たりのソフトな日本では、農業が環境に優しい産業であると誤解されがちである。しかし、日本の環境保全型農業への転換は遅れており、その必要性を認識できない農家や関係者が意外に多いのも事実だ。農業は日々の営みであり、産業である以上は、生産性・経済性は重要であるが、他の産業、大企業が環境との調和を加速してゆく中、農産業界のそれへのシフトや対応への遅れには、苛立ちさえ感じる。二十一世紀は「汚染者支払い原則の社会」つまり、環境破壊や汚染した当事者がその責任を負わなければならない。化学肥料や農薬による汚染の責任を農産業界で負えるとはとても思えない。農業が自然破壊や環境汚染を行なっている場合ではないのだ。農業だから殺虫剤を使ってもいい、農林水産省が認めているから使うではなく、農家自身の価値観と基準で考えてほしい。疑わしいものは使わない、「農業」は、環境負荷になることをしない産業であるべきだ。

●エコファーマー?「農地・水・環境保全向上対策

平成十九年度からスタートする国の「農地・水・環境保全向上対策」に先駆けてモデル地区としてエントリーしたある地域で、農地の畦草管理の対価の一部として有機リン系除草剤が現物支給されたそうだ。農林水産省がイメージする環境保全型農業とはとはその程度のものなのか。補助金目当ての環境対策だから実践する現場でズレが生じてくる。

食糧自給率向上へのノルマや、諸外国との生産条件格差の是正、国が短期的な視野で、反当りの収量等、生産性に重点を置くのは理解できるが、「農地・水・環境対策」の要件になっている「エコファーマー」が化学合成肥料や農薬を減らす技術の振興には限界がある。つまり、化学合成肥料や化学農薬の功罪を正しく認識し、有機農業を中心とした古く新しい農業技術の発展へ向け大きく舵を切る時期に来ているのだ。

数年前ある会合で、当時の農林水産省環境保全型農業対策室長と話す機会が有り、有機農業振興に対する国の考え方を聞かせてもらった。当時、国は有機農業を振興する考えはなく、環境保全型農業の底辺を広げる意味で、エコファーマー認定制度を発展させて、様々な支援策を考えてゆくので、是非エコファーマーにエントリーしてほしいと言われた。さっそく申請を出したが、一年待たされたあげく、石川県から良い返事を頂くことはできなかった。地域の担当普及員の主観によって温度差が有るらしいが、科学農薬を減らす技術、化学合成肥料を減らす技術が要件になっているエコファーマーに、それらをまったく使わない技術に挑戦している有機農家がはまるはずがないのだ、現実わたしの申請に対し関係機関から

●有機農産物のカロリー自給率

外国産の有機農産物輸入が増える中、カロリーベースの食糧自給率向上にとって重要な、大豆・麦類・米等の有機穀物の生産量が増えない。

農林水産省の発表によると、平成十六年に格付けされた国産有機大豆の数量は、約853トンである。国産有機麦類については、約687トン、お米は約10838トン。毎年減少する国産有機農産物だが、海外からの輸入有機農産物は増加の一途をたどる。有機小麦・有機大豆の生産が増えない理由を考えてみた。まず、第一に有機農産物全体の問題として、厳格な有機JAS規格への対応が挙げられる。多くの帳票への記帳や管理など膨大なルーチンが発生し、外部監査への対応など、心労も多い。第二にコスト面である。認証料や前述のルーチンに対する人件費など、コストがかかる。第三にインセンティブが少ない点である。苦労して自らリスクを負い生産・販売しても、交付金大豆・麦経などの補助金が上乗せされる慣行栽培品と比べて手取りが多いとは言えない。(平成十九年から始まる品目横断政策により交付金等は廃止されるが、現行支援策の代わりに交付される過去の生産実績に基づく支払い対象から、地産地消の麦・大豆。契約販売の麦・大豆がはずれる)第四に有機栽培技術が発展途上である点が挙げられる。国の研究機関・大学・各地の農業技術センターを含めて、有機栽培技術について研究・支援を行なう体制は整っておらず、有機栽培農家の多くが孤軍奮闘、壮大な実験栽培を実践しているのが現状である。第五として、加工食品の原料となることが多い有機大豆・麦類は、加工メーカー、流通の協力無くして安定販売に結びつけることは難しく、小さい面積・小ロットからスタートする草の根的な生産活動にはむかない。第六に有機麦類生産で苦労するのが、赤カビ病(DON)対策である。個人的には殺菌剤の防除の有無より、開花期以降の天候により左右される病気であると考えるが、有機栽培の技術に代替の技術がない以上、リスクと慣行農家との摩擦が有る。無防除では農業共済の対象にもならない。有機JAS規格の関連法案は、元来、消費者保護の為の法律である。有機農産物の生産・格付けに対して、インセンティブなど求めてはいけないのだが、現状では有機大豆・有機麦類を再生産できる農家は稀である。

有機JASは消費者保護のためにあり、ブレーキだけの政策では、JAS規格に基づく有機大豆・有機麦類の生産者は増えるはずないのである。

JAS有機農産物の生産量の推移 (単位:トン)農林水産省ホームページより

 


 


国産

 


 


輸入

 


 


H15

H16

H17

H15

H16

H17

12,287

10,838

10,400

2,031

2,604

4,510

麦類

559

687

732

1,086

1,733

2,365

大豆

945

853

639

44,874

53,212

70,775

野菜

27,460

28,125

29,667

23,994

26,994

62,994

 

    消費者保護と消費者利益

元来有機JASは消費者保護のための決まりであり、有利販売や高付加価値を目的としたものではないことは。つまり「有機○○」と名乗るためには、国が定めたルールを守りなさいよと言う事である。禁止農薬以外で使える農薬もあり、有機JAS以外でも安全な農産物は沢山存在する。

施法前は有機表示が氾濫していたのも確かで、この法律により根拠のない有機表示が激減したのもたしかである。しかし、一方では様々な工夫や努力で草の根的に有機栽培を実践してきた方々に不利益をもたらし、新しく有機栽培を志す生産者にブレーキをかけ、市場から排除してしまったのも事実だ。

結果として、国産有機農産物は伸び悩み、外国産有機農産物の輸入を助長してしまったのだ。

近年有機農産物の販売を通して、BSEや残留農薬問題など、消費者の安全安心な食品に対する関心やニーズが高まってきたと感じる。有機JAS法が施法された頃とは、消費者の意識が大きく変わっている。オーガニックと言えば外国産原料、良識ある生活者が国産の有機を選ぼうと考えても、手にする機会は少ない。多くの国民が、国産(生産者の顔が見える)の安心安全な食品を安価で気軽に買えることを望んでいるにもかかわらず、手に入らない。有機JASの規格は消費者保護であっても消費者の利益にはつながっていないのだ。

熱心なお客様から「国産有機がない場合、国産の大豆を選ぶべきか外国産のオーガニック大豆を選ぶべきか」こんな質問を頂く事もある。もちろん「国産を選んでください」と答えるのだが、私の希望的な意見でしかない。

国産農産物が安全安心の生産技術を磨くことは、消費者の国産農産物指名買に直結する。国産有機栽培は外国産農産物との差別化ポイントが明確であり、それを振興することは、国産農産物の価値昇華にほかならないのである。

慣行栽培を中心に組み立てられる現在の農業政策を改め、有機農業を中心とした環境保全型農業の振興を推し進める政策に転換することは、日本の消費者利益につながり、地球規模で考えても有意義なことなのである。

豆腐・納豆の原料原産国表示のガイドラインがようやく示されたが、良識有る消費者が国産を選択できるように、小麦製品など全ての加工原料の原産国表示を厳格に行なうべきであり、外食産業・中食にも導入すべきである。

    有機栽培農家の裾野を広げるには、その生産性・将来性を示さなければならない

私財をなげうち家族に迷惑をかけて、再生産できないモデルを夢見ても思想家として終わってしまう。本当に「千年産業」を目指すのであれば、農業者として、経営者として、再生産できる有機農業モデルを実践・世に示さなければいけない。不作の理由を異常気象や天候のせいにする事も多く、多くのメーカーや流通・消費者に迷惑をかけることも有った。

絵にかいたモチを売るのは詐欺師である。有機大豆・有機小麦は絵に書いたモチなのだろうか。いやそうではない。日本の各地に、その地域の反収を上回る有機大豆の生産者がいる。私の農場でも確実に技術が向上し、生産性が向上してきた。また、土作りが進み、素晴らしい生態系が育まれてきた。有機大豆・麦類もその生産性や永続性を世に示し仲間を増やす時期に来ている。良い経営モデルが有れば、それに追随する生産者が必ず現れるからだ。以前は、しつこく反収を聞いてくる方に対して「千年の平均反収で勝負しましょう」などと、価値観の違いを語ったものだ。しかし、日本の有機穀物栽培を志す多くの後継者達に対して、有機栽培の生産性・将来性を示さなければならない。

    土作り

総窒素量は何キロですか?追肥はどうしていますか?穂肥は?・・・・。視察にいらっしゃった方からこんな質問を受けることが多い。窒素・リン酸・カリを中心に即効性のある化学肥料で、植物の成長をコントロールする慣行農業の技術は、世界各地で食糧増産の成果をあげてきた。私の有機農業は、土作りが全てである。稲は地力で取れ、大豆も地力で取れ、麦だって地力で取れ。千年先に豊かな大地を残すために、土作りをする。土作りは貯金であり生態系の創造である。私の代では無理かもしれないが、肥料が手に入らなくても、10年位は無肥料で収穫できるような畑にしたいと考える。

さて、専門的な話になるが、植物が無機体でしか窒素を吸収しないと信じる農家が多い。私も大学の農学部でそう習ったし、数年前までは、農業の常識であった。小祝政明先生著の「有機栽培の基礎と実際」では、植物が有機体でアミノ酸等を吸収する仕組みや、有機栽培での施肥計画の実際が書かれており、大変勉強になった。経験や予測にたよる施肥の時代から、土壌診断による科学的な有機肥料投入の時代に入ったと感じる。私たちも土壌分析を実践し、よりよい土作りを目指している。

中国から輸入された有機肥料から、基準値を大幅に超えるカドミウムが検出され、販売者が農家の庭先から有機入り肥料を回収したという記事が新聞に掲載されたのは、記憶に新しい。前述の事例は論外としても、本当に有機肥料は安全なのだろうか?有機JASでは、汚泥堆肥以外の堆肥は使用を許されているが、堆肥の安全性は担保されていない。例えば、豚糞由来の堆肥なら餌に混ぜて与える銅の残留があるし、乳牛に使われる抗生物質、敷き藁の安全性、ブロイラーの糞にも相当な抗生物質が残留している。家畜由来の堆肥を否定するものではないが、有機農家の責任として、堆肥原料をトレースすることは重要である。

私たちは、年間三千トン近くの堆肥(鶏糞主体)を使用する。全て自家生産で、気心の知れた一軒の採卵農家から原料を調達する。植物性の原料も国産由来の原料しか使用しない。

安全に対する基準を、有機JASの規格内に求めてはいけないのである。

    病害虫対策

水稲・麦・大豆にとって、防除の対象になる病害虫は何だろう。思い当たるところで少し羅列してみる。水稲ならバカ苗病・いもち病やドロムシ・カメムシ・ウンカ。麦なら赤カビ病・黒穂病。大豆なら、紫斑病・モザイク病・種ハエ・マメシンクイガ・イチモンジマダラメイガ・カメムシ・・・etc。地域の気候や環境によって異なるが、10年以上無農薬でやってきたが、上記が原因で極端に収量が落ちた経験はない。私が生産する米のカメムシ粒はゼロではないし、豆の食害は散見される。圃場によってはかなりやられる場合もあるが、経営面積全体で見れば許容範囲だ。赤カビ病とて、結果として大発生した年は未だない。関係機関から出される多くの栽培指針を、無農薬を実践している立場から見ると、あきらかに農薬の使いすぎである。ほとんどが病気の発症・害虫の発生前に、予防的に使うケースが多いのだ。穀物農家は、その等級が農家手取りと直結する為、農家は予防的に農薬を使ってしまう。食糧法の農産物検査基準は、外観品質重視であり、安全性は品質には含まれない。例えば大豆の紫斑病と呼ばれる病気がある。大豆の粒が紫色になる病気で、私の有機大豆にも散見される。検査基準では一定量以上あれば等級ダウンの原因となるため防除のため何回か農薬を使う。しかし、紫斑粒と呼ばれるこの大豆を食べても人体になんら影響はないし、醤油・豆腐の加工も問題はない。製品にそのまま出るので、煮豆や納豆メーカーからは敬遠されるが、色彩選別機でも取り除ける。一等比率に影響を及ぼす玄米のカメムシ粒とて、色彩選別機で除去されるのである。

果樹や野菜はともかくとして、水稲・麦・大豆では、現在より大幅な農薬削減が可能だと感じる

    雑草対策

私の有機農業にとって、雑草は減収をもたらす一番大きな要因である。実際、除草剤なしで雑草を抑える方法が確立されたならば、土地利用型作物の無農薬転換は大幅に進むだろう。私の大豆畑の場合、雨などで、機械除草のタイミングを失えば、収穫皆無の畑となってしまうことも有る。実際、本年(平成18年)の作付けでも、収穫ができないと予想される畑が8ヘクタールほど在る。播種後の長雨で、除草機会を失ったのだ。機械除草はトラクターに装着する特殊なカルチや中耕ローターと呼ばれる機械を使って行なうが、最終的には、人の手による除草が必要になる。地域のシルバー人材センターなども活用するが、経費を考えると、全ての畑に入ることはできない。私の大豆畑100ヘクタール全を、人の手により除草したならば、約一千万円の人件費がかかる。しかし、良い経営を行い、人件費に充当できるようになれば、もっと多くの、おじいちゃんやおばあちゃんに頑張ってもらおうと思う。農業に人件費を惜しんではならない。農村雇用の活性化やシルバー人材の活用にもつながって行く。今来てくださっているおばあちゃんの一人は「自分の健康と長生きのために頑張っている」と言って下さる。有機農業に人の手をかけるのは当たり前のことであり、省力への道など無いのかもしれない。昔の農業に戻ること。農村や畑の中に人の笑顔が有ることは重要である。全国の農村で、農業が基幹産業と再発見されたとき、過疎地で顕在化する多くの問題が解決するかもしれない。有機農業にはそんな可能性すらあると感じる。

    地球温暖化、異常気象について

ここ数年の天候を人間の感情に例えるなら、喜怒哀楽が激しくなった。近年の農作業体験から感じることだ。年間の積算気温や降水量は、平年と大差が無いらしいが、晴天や降雨の続く間隔が長く、全ての気象現象が極端になった。つまり雨が降ればとことん降り、晴れだすと雨の一滴も降らない。台風の数が多いのも極端だ。うまく言えないが、お天道様の寛大さが無くなったような気がする。昨年末は11月中ずっと雨で、12月にドカンと雪が降った。晩生の大豆は刈れずに雪の下、小麦の播種期も失ってしまった。今年の麦秋から大豆播きを終えて決意したことは、もう天候の責任にできないと言うことである。あきらかに天候がおかしい。昔の経験や長期予報は当てにならない。いつでも、干ばつや、大雨に対応できる技術や決意を持って営農しなければならない。地球温暖化や環境破壊は農業の現場で体感できるくらい深刻であり、今後も加速度的に進んでゆくだろう。先人が体験したことの無い気象環境が待っているに違いないのだ。

 

    事業継承・スタッフ

金沢農業は商号で、青色申告者井村辰二郎の個人経営である。将来的に農業生産法人化を目指すことになるが、今は個人経営で有る。千年先まで続く経営体を目指すならば、伝承が大きな課題となる。つまり、後継者の問題だ。私の息子は、現在4歳。バスの運転手になると言っている。息子に過大な期待をするのも無理だし、孫、ひ孫と継承して行くのは非現実的である。創業者としての理念を存続させるには、良い人材の確保と公的で開かれた経営体を残すべきだろう。現在、若いスタッフが4人いる。全員正社員で、厚生年金・社会保険を完備している。もちろん通年雇用だ。経営者としてくじけそうになるときも有るが、この経営体は私だけのものではない。近年、従業員や実儒者・消費者への責任を強く感じている。まだまだ、発展途上の経営体なのだ。

    食育(井村家の国産自給率と自給自足率)

井村家が買う食材は、そのほとんどが国産である。外食する場合も、なるべく、地産地消や国産にこだわったお店を選択する。したがって、井村家だけで、食糧自給率を計算すれば、相当高い数字になる。

さて、私は有機農家である前に、7歳の娘と4歳の息子の親でもある。子どもたちにはちょっと難しいかと思いつつ、自分の家の自給自足率、私が作っているものをカロリーベースで計算してみた。豆腐や納豆、みそも作っているのだが、50%を超えるのがやっとだった。「おかしいな」と思ってよく考えると、妻も娘もパンが大好きで、ラーメンも食べるしうどんも食べる。「あぁ、これはもう小麦が日本の主食になりつつあるのかな」と感じた。小麦もやはり日本の伝統的な食べ物でもある。「よし、じゃあ、有機で小麦を作ろう」と小麦を作り始めた。

小麦が自給できるようになって加工品も増え、少しずつだが、食料自給自足率が我が家でも上がってきた。(現在約60%)

「このアスパラは、能登島産」「この鶏肉は国産だけど、餌は外国から輸入しているかも」「パパの卵は、餌もパパ産だよ」子どもたちと一緒に食卓を囲みながら、子供たちと一緒に食卓で食べ物の話をする。これが我が家の本当に豊かなひとときだ。食卓から始まる食育である。学校での取り組みも重要だが、食育は家庭の食卓の中からも、ぜひ進めていただきたいと思っている。

●消費者に近づき双方向の流れを造る(豆腐・味噌・納豆・麦茶・醤油・小麦粉)

有機農家が地産地消、産直を目指すことは自然であり意義が有る。消費者に近づきたい、生産者の顔が見える有機加工品を世に出したい。

就農と同時に始めたのが豆腐作り。当時は、生産する大豆のほとんどを関西の豆腐屋さんに買ってもらっていた。自分の大豆を地元の消費者に食べてもらいたいと、豆腐作りをはじめた。300万円位の投資をして、豆腐プラントを購入したが、国産大豆・無泡消剤・天然にがりでの手造り豆腐生産は難しく、機械メーカーの社員の方からは、素人では絶対無理だと言われた。悪戦苦闘が始まった。見よう見まねではじめた豆腐作り、農作業への支障がないように、早朝の作業と決めた。納得のいく豆腐を造れるようになるまで5年位かかっただろうか。しかし、この経験の中で、色々な大豆品種の風味や加工特性、お客様に伝える商品知識などが蓄積されていった。地域の銘柄・奨励品種にとらわれず、多くの大豆を試験栽培し加工を積み重ねた結果、栽培技術に対しても貴重なノウハウが蓄積されたのだ。さて、無農薬大豆の裏作は大麦である。有機圃場の二毛作であるから、大麦も有機栽培になる。残念だが当時は慣行品として農協へ出荷していた。奈良県のある共同購入会さんから、大和茶の生産農家に麦茶を作ってもいませんかともちかけられた。委託加工は、商品化までのスピードが速く、設備投資や技術習得の必要が無い。なによりも有意義なのは、生産者の顔が見える農産加工品を直接消費者へ届けることができることである。そして、加工品が増えるきっかけとなったのが有機小麦の生産開始だ。麦茶がきっかけで、OEMによる委託加工生産により製品が増えていった。豆腐製造経験によって学んだことは、食品加工の難しさ大変さだ。国産有機原料に理解があり、技術を持ったあるメーカーさんに作っていただこう。こう考えるようになってからは、商品開発のスピードがあがり、ドンドン加工品が増えていったのだ。大豆・麦加工品で原料生産者を単一農家までトレースできること。有機JAS規格より重要な差別化ポイントである。

    最後に

「有機栽培は素晴らしい」この一言を伝えたくて、発展途上ではあるが、現在の経営をまとめてみた。孤軍奮闘頑張ってきたが、3月の全国集会を機に、多くの先輩や仲間がいることを再認識した。また、このネットワークを広げてゆくことが、日本の農業の発展につながると強く感じる。先輩たちの努力や苦労を結実させ、豊かな農地を未来の子供たちに継承するために。今、私がすべきことは、地域で仲間を増やし、有機農業の可能性を人々に伝えることだと決意した。

「頑張れ日本の有機農業」

※今回私が使う有機農業の語意は、有機JAS法により表示を許されたと言う意味ではなく、自然農法など化学合成された肥料や農薬を使用せずに、自然環境と対話しながら営む農業と考えている

 

 


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